冬夜社長初陣

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ガチャ…。 ドアが開くと同時にベテラン秘書課主任の声が響いた。 「おはようございます。社長就任おめでとうございます。」 ーー「おめでとうございます。」ーー 秘書課8名、プラス副社長と専務、5名ずつが両脇に並んで新社長を迎えた。 静は一番端に立ち、列から少し下がり気味で頭を下げていた。 「おはようございます。今日からよろしくね?」 副社長と専務に付き添われ、話をしながら秘書の顔を見て行く。 頭を下げている静の前を通り過ぎ、副社長にドアを開けてもらい、社長室に入って行った。 「ね…ねぇ!凄いカッコ良かった!!」 「で、でしたよね?社長のご子息だからお優しいとは思ってましたけど……凄いいい男でしたね。」 キャアキャア言う若い秘書をひと睨みで主任は黙らせる。 「女子校じゃないのよ?仕事に戻りなさい。」 「はい…申し訳ありませんでした。」 沢田秘書に睨まれて、集められた秘書は自分の担当の元に戻る。 静はそのまま部屋の自分の机に座り、スケジュールが入れてあるパソコンを開いた。 「黒田さん、新社長へのご挨拶、副社長と専務が出て来たら私行くから、一緒にどう?」 「あ…、はい。そう…ですね。」 「お顔見ました?」 沢田主任に聞かれて、罰が悪そうに答えた。 「いいえ…。頭を下げていましたので…。」 クスッと笑うと、しょうがないわねぇ、と沢田は続けた。 「騒ぐ子達も駄目だけど、顔を確認するのは大切よ?自社の社長の顔を知らないでは話にならないわ。間近で見る機会はそうないから、ちゃんと見ておかないと…。」 「はい。申し訳ありませんでした。」 その場で立ち上がり、頭を下げた。 沈んだ静を見て、沢田主任も溜息を吐いた。 「……まぁね?これからあなたは毎日、嫌でも見るわけだし…。歳下は流石にやり難い?」 「いえ…仕事ですから。ただ…社長、いえ、会長の頼みで秘書になりましたので、新社長が嫌がられたら人事でも総務でも戻して頂く覚悟です!」 「戻りたいのね?」 くすくす笑いながら沢田が訊き返すと、後ろで社長室のドアが開いた。
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