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…これは…どういう事なの?イオニコフは知っていた???でもゲームではリチアと一緒に魔女エラを殺したわ。魔女になるのを阻止出来ると知っていたのに?
エラ・エーデルワイスは基本的なエンディングでリチアの取り巻きAとして彼女の幸せの為に奔走するだけのポジションで終わる。そこで描かれるのは彼女は魔女になることはなくなんて事のない平凡な終わり方だ。可でもなく不可でもない。だからこそ真・ENDで迎える最悪のシナリオは賛否両論で設定の稚拙さも目立った。アイザックとの記憶の擦り合わせのお陰でこのエンディングについては話したがその何処にも魔女に関する詳しい設定は出てこなかった。
…そもそも、エラが魔王に拾われた過程も詳しい記載はなかったもの。あったとすればエラにとっての最終イベント…魔王城での舞踏会。その直前部分に描かれた魔王達との関係を描いたシーンだけ…。
たったそれだけのはずだ。魔女そのものの生まれの話も魔女になるのを防ぐ方法も描かれることはなかった。
それなのに今目の前で抱き締めてくれている英雄イオニコフ・メルエム=オーデルセンは原作で知らされなかった設定を知っている。そして「魔女かもしれない」と話しながらもこうして抱き締めてくれている。
…ここは、本当に時ノクの世界なの?
けれども起きているイベントはどれもゲームで見たことのあるものばかりだ。
「…では、英雄として“魔女かもしれない”そのエラ・エーデルワイスを殺さない、と言うのだな?」
「…そう言ってるつもりなんだけどな。そもそも、魔女は脅威ゆえに処刑するって言うのがキミらの持論なんだろう?けど、処刑しなくても光の世界を守れて娘の命だって守ることが出来る。そんな最善策があるならそれを選ぶのが筋じゃないかい?」
「それは…」
「大体、魔女が生まれたのだって人間が命を捨てたりするからじゃないか。まだ何もしていないエラを可能性があるというだけの段階で処刑しようだなんて、それこそ命を粗末にしすぎじゃないかい?そんな様を見たら原初の魔女は再び光の世界を闇で喰らおうとするはずだよ。それじゃ、永久に魔女の脅威は消えやしないんじゃないかい?」
…イオニコフが至極真っ当なこと言ってる…。
これにはイドラもぐうの音も出なかったらしい。不貞腐れたように黙ってしまった。だが、この状況、紗夜にとっては好都合だった。真・ENDで最も警戒すべきイオニコフが完全に魔女側についてくれたのだ。最悪の結末を回避できるかもしれない。
まだ完全にエラが魔女である、という結論に至ったわけではないが概ねそうだと言っているようなものだ。
彼の腕の中で感じる温もりに初めて安心することが出来た。今のイオニコフからは一切の敵意を感じない。それにイドラからも感じる警戒心が柔いだのを感じた。
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