第十夜 ③

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☆ ドサッと体をベッドの上に放り投げたエラはまだどこか夢を見ているような気分だった。 「こんなことってあるのかしら…」 部屋に引き上げた後、イドラは自分の部屋へ。イオニコフとギーウィは用意された客室へ。 奇跡のようなことが起きたが、それでもまだ疑問は残っている。 魔女についてあれほど詳しかったイオニコフが何故原作ではリチアと共に魔女エラを殺すことに躊躇いがなかったのか。それとそもそも何故イドラが帰省イベントを起こしその相手が自分(エラ)だったのか。アイザックがどうにも絡んでいそうだったが…。 それと、庭園でイオニコフが現れたときといい、雷を落としたときといい何故衛兵などは出てこなかったのか。 …まぁそこはゲームだからと言えばそれでおしまいなのかも知れないけど…。 そう言えばイオニコフを降ろした後ギーウィは何処にいたんだろう。すごく大人しかったような気がするが…。 色んなことがあってうとうとし始めたエラはそのまま深い眠りの中に落ちていった。 ☆ その夜、エラの枕元に真っ黒なドレスを身に纏った女が現れた。 恨めしそうな声で眠るエラを睨みながら呟く。 『何故、恨まないの。恨みなさい人間を。あなたを捨てた人間を…!!!』 邪悪な魔力をエラに注ぎ込む。彼女の体にその魔力が少しずつ取り込まれていく。エラが苦しみ始めたその瞬間、女はニヤリと笑ったが風と共に現れたイオニコフとギーウィの風の魔法によって存在を掻き消された。 「…キミの出る幕じゃないんだよ」 グルルル…と威嚇するギーウィと闇夜にキラリと光るイオニコフの瞳。 苦しんでいたエラが安定して呼吸をし始めた姿を確認したイオニコフは暫くの間、ベッドに腰掛けて彼女の頭を撫でた。 そうして夜が明けるまでの時間を過ごし、日が昇る頃に彼女の部屋を出ていった。
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