第十夜 ③

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「おかしいなぁ…ギーウィが言うにはこの辺にいるって言ってたんだけどな…」 行き交う人々の間に人を捜すのは英雄イオニコフ。その彼が雑踏の中、反対側の歩道を歩く目的の人物を見つけた。 「あ…!おーい…」 その人物に声を掛けようと駆け寄って途中で足を止めてしまった。 「また…彼と一緒…」 視線の先にはエラとその隣を歩いていたアイザック。二人が楽しそうに話をしながら歩いていくのが見えたのだ。その様子を見てしまったイオニコフは寂しそうな顔をしてポツリと呟いた。 二人の姿が再び雑踏に消えていってもイオニコフはその場で立ち尽くしていた。 「…エラ…」 エラとアイザックが二人でいる時、エラはいつも楽しそうだ。よく笑っているし表情がコロコロと変わる。自分といる時の彼女とは全く違う。 それは自分が英雄で彼女が「魔女かもしれない」っていう不安があったからじゃないかと思っていた。けれどそれはあの日に解決したんだと思っていた。だって彼女には伝えたはずだ。「魔女かもしれない」としても自分が英雄であったても殺したりするはずないって。大丈夫だって。それでも…。 「まだ、あんな風には…」 どうしたらあんな風に笑ってくれるんだろう。どうしたらもっと仲良くなれるんだろう。アイザックは、ずるいなぁ…。 日が暮れる城下街でそんな事を考えながらイオニコフはポツンと佇んでいた。
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