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間近で見る少女は随分と幼く見えた。年の頃なら十四、ないしは十二三くらいなのかもしれない。
「買う人がいるんですか?」
少女は首を横に振った。
「全然。誰も買ってくれません」
「どうして、その……。どうして買ってくれないのですか?」
「きっと、あたしが悪い子だからです」
キャミソールから覗く少女の肩は白くなめらかで、細く長い腕が続いている。通り過ぎるクルマのライトが肩口の艶を妖しく撫でていった。
若々しい長い髪はなめらかに流れ、薄闇に浮かびあがる整った白い顔には、鈍い輝きを放つ、若さと生命力を感じさせるふたつの目が、鋭く私を観察していた。赤く小さな唇が開く。
「でも、おじさん……は、何故かあたしに声を掛けました」
「それは、そう――私は旅行者だから――」
彼女の目がカメラのシャッターのように、ぱちりと瞬きをした。その途端に、訝しげだったその表情がスライドのように切り替わり、緊張が緩んだと感じさせた。
「そう、それで……」
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