二 あたし売ります。

2/5
前へ
/14ページ
次へ
 間近で見る少女は随分と幼く見えた。年の頃なら十四、ないしは十二三くらいなのかもしれない。 「買う人がいるんですか?」  少女は首を横に振った。 「全然。誰も買ってくれません」 「どうして、その……。どうして買ってくれないのですか?」 「きっと、あたしが悪い子だからです」  キャミソールから覗く少女の肩は白くなめらかで、細く長い腕が続いている。通り過ぎるクルマのライトが肩口の(つや)を妖しく撫でていった。  若々しい長い髪はなめらかに流れ、薄闇に浮かびあがる整った白い顔には、鈍い輝きを放つ、若さと生命力を感じさせるふたつの目が、鋭く私を観察していた。赤く小さな唇が開く。 「でも、おじさん……は、何故かあたしに声を掛けました」 「それは、そう――私は旅行者だから――」  彼女の目がカメラのシャッターのように、ぱちりと瞬きをした。その途端に、訝しげだったその表情がスライドのように切り替わり、緊張が緩んだと感じさせた。 「そう、それで……」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加