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男はいわゆる、独身貴族というやつだ。
新卒で、小学生も名前を知っているほどの企業に就職した。
十分な経験を得たのち、27歳の秋、父親の会社に再就職している。
代表権のない取締役に就いたのだ。
男の年収は同世代の平均の7、8倍もあった。
ここに来る前は、都心のタワーマンションの高層階で一人暮らしをしていた。
本人曰く、仕事と遊びのメリハリをつけて、どちらも存分に楽しんでいたらしい。
平日のアフターファイブは、トレーニング・ジムで汗を流す。
ジムに行かない日は、知人との会食や趣味の集まりに時間を費やしていた。
交際範囲は広い。
ただ知人・友人の半数は、男と同類の「パリピ」だ。
今のところ結婚する気はない。
毎週末、違う女性を自宅マンションに招いていたようだ。
「たいそうなご身分じゃないか」
水を向けると、男は両手で体を抱いた姿勢のまま身をよじった。
照れているらしい。
俺はため息をついて、調書をめくった。
次のページには、男がここへ来るに至った経緯が、以下のように記されていた。
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