2 総真くん総真くん総真く(∞

17/66
前へ
/368ページ
次へ
想が淹れた紅茶で、早速うーのお菓子をいただくことになった。 バナナのパウンドケーキと、抹茶とプレーンのボックスクッキーだった。 僕の家のリビングは二人掛けのソファが向かい合っていて、片方に僕、向かいに想と美結が座るのが定位置だった。 想と美結は、お互いがいれば物語が完結する。そういう二人だ。 美結は、結構分厚い眼鏡をかけている。 コンタクトはアレルギーで出来ないんだけど、学生の頃の美結の写真には、眼鏡をかけているものなんてない。 ……僕を産んだとき美結は生死の境をさまよって、後遺症が目にきて視力ががくんと落ちたんだ。 難産だった僕の出産。 僕は産まれてすぐに保育器に入れられて、美結は丸四日、意識を取り戻さなかった。 想はその四日間を、自分の人生より長い時間だった、と言ったことがある。 誇張や冗談じゃなくて、本気でそうだったんだろう。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加