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「ひ……ッ! あ、あんた誰だ!? いつからそこに!?」
驚くのも無理はない。
さっきまで誰もいなかったはずなのに、豪奢な椅子にゆったりと座る老人が突然現れたのだ。
その老人は美しい彫刻が施された肘掛けにもたれ、ウェーブがかった白髪に、たっぷりの髭をたくわえていた。
まだ世間をよく知らない少年でさえ、その威厳に圧倒させられる。
「あ、あんた……いや、あなたは一体……?」
思わずその場に正座してしまうくらいの存在感。
『儂か……儂は神、』
ああ、やっぱりそうかと少年は納得した。
自分は死んだのだ。
そして目の前にいる、圧倒的神々しさを放つこの人は……間違いない……神様だ……!
『小さな命を助けようとしたのだな、すべて知っているぞ。心優しき少年よ、残念だがお前の命は尽きた……が、儂の力を持って異世界に転生させてやる。その優しさを強さに変えて、生まれ変わった世界で人々を救ってほしい。なに、案ずるな。チート能力を1ダース程付けてやろう、』
「マジですか!?」
パチン____
今度は神が目の前で指を鳴らす。
途端、少年のすぐ前で激しい爆発が起きた。
鼻先スレスレ、だがその炎は竜巻となり天へと吸い込まれていく。
こんな事ができるなんて……神様すげぇ……!
歓喜の涙を滲ませた少年は、炎の竜に誘われ異世界へと旅立っていった。
……
…………
………………
この少年が異世界に転生し、伝説の勇者と呼ばれるのは、ここから15年先の話である。
そして少年を転生させたこの神は、使い勝手の良さと、顧客の要望に寄り添ってくれる誠実さを買って、神御用達イベント会社のレンタルスペースを長きに渡り贔屓にしたという……
了
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