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____だから……ヤメロ……眩しい……
____見せモノじゃねぇよ……勝手に撮るな……
____眩しい……眩しい……ヤメテくれ……
「……メテ……ヤメ……ダカラ……だからッ! 勝手に撮るなっての……! うっ……! なんだココ……?」
少年が目を覚ますと、そこは白い空間だった。
痛む身体をなんとか起こし、キョロキョロとあたりを見渡すも果てが無い。
身を置く床も、まわりも、すべてが白く光っている。
トラックに跳ねられた時、最後に見た光景は、無断で自分を撮影するスマホのフラッシュの数々だった。
その人だかりは今は無い。
ここは……どこだ……?
誰もいない、なんの音もしない、眩しいくらいの光に包まれ、たった一人、どうしてここにいるのか、皆目見当がつかない。
頭に手をやると、不思議な事に傷もなく出血もなくなっていた。
「俺……助かったのか? あれは夢だったのか……? いや、その前にココどこだ……?」
病院ではなさそうだし、まして家でもない。
事故にあったというのに親もいない。
どういう事なんだ、不安と焦りに汗がボタボタと床に落ちる……と、その時。
パチンと指を鳴らす音がした。
途端、あれだけ明るかった光が徐々に弱まり、あたり一面暗くなっていく。
「なんだ! なんで暗くなる!?」
何も無い、誰もいない空間で、光まで失ったら……そう思うと、少年の心は縮み上がった。
パチン、と再び指を鳴らす音がした。
すると今度は、空間全体に響くような雷雨の音が響く。
実際に雨は降っていないのだが、事故の記憶が生々しく思い出された。
「ヤメロ……! ヤメテくれ……! 誰か! 誰か助けて!」
頭を抱えその場に座り込む少年の耳に、3度目の指を鳴らす音が聞こえた。
その直後、暗かった空間に再び光が満ちてきた。
暗闇よりはずっとマシだと、小さく息を吐いた少年はゆっくりと顔を上げた、すると。
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