潮 壱

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 おい、頷けよ。  なぎさが困ったような顔で沈黙するから、俺も不安になってきた。俺と二人きりで練習とか、もしかしたら、いや、もしかしなくても嫌かもしれない。健太郎だったらいいのか……? 健太郎連れてくるか? ……それ、ちょっと嫌だな。 「ありがとう、よろしくお願いします」  長い沈黙の後、なぎさがそう言って頭を下げてきた。俺は嬉しくなって、照れ隠しになぎさの頭をポンって叩く。 「おまえ、トロくさそうだから、コートの中を無駄に動かずに後半に向けて体力を残して、ゴール下でリバウンド取って、シュートに専念しろ」  照れてることに気が付かれたくなくてついつい早口になる。あぁ、これだからいけないのか? なぎさ、俺のこと怖がんないかな…… 「あの、先生――リバウンドって何でしょうか?」  遠慮がちに手を挙げたかと思ったら、そんな質問をしてきた。そうか――そこからか……こりゃ教え甲斐がありそうだな。  
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