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なぎさと約束した土曜日、バスケットボールを抱えて家を出る。なぎさよりも早く公園についておきたくて、少し早めに来た。
まだなぎさは来ていない。俺はゴールリングに向かって、ドリブルをする。
大股でリングに駆け寄ると、そのままリングにボールを叩きこんだ。
こうやって公園でバスケするのとか、懐かしいな――子供のころはリングに手が届かなかったっけな。
何本かシュートをしていると、視界の端になぎさが写った。少し離れた場所から俺がシュートする姿を見ていたらしい。
「よう、来てるんなら声かけろよ」
「すごい、格好良かったー。心晴がすごいって言っていたけど、本当だねぇ」
「なんだよ、このくらい普通だろ、健太郎だってうまい」
なぎさに褒められて俺は少し気恥ずかしくなる。きっと健太郎がシュートしてる姿を見ても、同じように褒めるんだろうなって思ったらなんだか面白くなかった。
「すごいなぁ、私には未知の世界……」
「大げさ、ほら、これ持ってみろ」
俺はなぎさに向かってバスケットボールを放り投げる。宙に浮いたボールを両手でつかんだなぎさは、驚いたように目を見開いた。
「重い……」
「だろ、けっこう重い、それからでかい。おまえの顔よりもでかいな」
そう言ってから俺はなぎさの顔に掌をかざす。小せぇ顔。片手で掴めそうだ。俺が本当に顔を鷲掴みにすると思ったのだろう。なぎさはぎゅっと目をつぶった。
「あはは、本当に掴んだりしねえよ」
「もう、びっくりしたよ!」
顔を赤らめるなぎさの目は、水面のようにキラキラと輝いて見える。
あーなんだよ。そんな顔すんな。本当に触れてみたいとか、思っちまうだろうが──
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