潮 壱

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 翌日の練習、なぎさはあきらかに筋肉を傷めていて、辛そうに眉をひそめながら必死にボールを投げていた。  「休憩するか」って聞いてもにっこりと笑って首を横に振る。たかがクラスマッチになに本気になってるんだよって呆れる気持ちもあるけど、なぎさのこういう一生懸命なところがすごいなと思う。  だんだんとフォームが安定して、シュートが入るたびに嬉しそうに笑うものだから、こっちまでつられて嬉しい気持ちになる。  「そろそろ終わりにするか」  もう五時だ。今日も随分練習したよな……なぎさ、大丈夫か? 「今日もありがとう」 「帰ったらちゃんと腕冷やしとけよ、おまえ、今日筋肉痛だったろ?」 「あはは、ばれたかぁ。情けないばかりです」  情けなさそうに笑う。こうやってへらへらしたやつ嫌いなんだけどな。なぎさは全然嫌じゃない。おかしいな―― 「いや、美術部員だからな、仕方ないだろ。平日の五日間はイメトレイメージトレーニングにしてあんまり筋肉使うなよ」 「わかった、そうする。平川君ってなんだか先生みたい」  平川、平川って、いつまだ経っても他人行儀だよな。いや、これが普通か? でも心晴は名前で呼んでくるしな――
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