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アレン「ふぅ、ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」
エレス「それは良かったわ。ところで今更なんだけど、君の名前を教えてくれないかしら?」
アレン「そういえば自己紹介もしてませんでしたね。僕の名前はアレン•ディルムと言います。」
エレス「アレン君ね。改めて私はエレス•レア•ナージャ、この国の王国騎士団団長をしています。後王国学園の理事長も」
世間に疎い僕でも彼女がどれだけ凄いのか、有名人なのかよく分かる。
世界屈指の魔術師騎士の教育機関、王国学園を10歳という若さで最年少で入学。そして卒業も13歳という最年少での卒業。
その後は王国騎士団の見習いとして入るも1年で副団長に就任。そしてその3年後には前団長から直々に団長就任の命令が下り、これもまた最年少で王国騎士団団長になった。
そしてその翌年に自らが卒業した王国学園から理事長のオファーを受け、16歳で理事長に就任、これもまた最年少だ。
アレン「存じてます。まさかあの有名なエレスさんに助けてもらうなんて、思ってもみませんでした」
自分はあのまま奴隷として死んでいくだろう。そう思ってたからだ。
助けてくれたのは嬉しかった。いつも助けを求めていたから。
でもいざ助けてもらうと自分は一体何をしたらいいのだろう。
ただ命令にに従って来ただけの僕に一体何ができるというのだろうか。
エレス「アレン君。貴方今、あまり良くない事考えていませんか?」
アレン「……僕に生きる価値はあるのでしょうか」
エレス「あります。生きる価値のないことなんてあり得ません!」
アレン「でも僕にはない。生きる価値も、人としての価値も。小さい時に親に売り飛ばされ、奴隷の商品にされても大した値も付かない。こんな僕に一体何の価値が?生きていて何の意味があるんですか?命令だけに従って自分の意志なんて何一つ持っていない。いつも救いを求めていたの、いざ救われるとこの先どうしていいか分からなくなる!怖くて怖くてどうしようもないんだ!これならいっそ、奴隷のまま死んでいった方がっ…!」
アレンが思いの丈を言い終える前にエレスが抱きしめた。
見ていられなかったのだ。人生のほとんど苦痛に奪われ、救われたと思ったのにその救いはまた彼を苦しめている。
エレス「貴方はまだ、外の世界をまだ知らないはずです。この世界には貴方がまだ見た事も、聞いた事もないようなモノで溢れています。生きる価値のない人なんていません。それに生きていく意味だって貴方にもきっとあります。それはゆっくり探していきましょう?私も手伝います。貴方が生きる意味を、価値を見出すまでずっと、貴方のそばにいます。だから生きてください」
アレンの心にエレスの言葉が強く響いた。
今までずっと一人だった。そんな自分のそばにいてくれると言ってくれた。
自分には価値が、生きる意味が必ずあると。
その一言でこの11年間、アレンの心に溜まった孤独と苦痛がアレンの涙と共に、流れていった。
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