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4 母の笑顔
マシュマロフォンダンのデコレーションを作り直すのに、それほど時間はかからなかった。よくお菓子作りをする分、青の食紅は持っていた。まだ色付けしていないマシュマロフォンダンもあったし、ピンクのマシュマロフォンダンに青を混ぜれば紫色になる。粘土みたいだから、形だって自由に変えられる。
いくら子供に呆れても、子供には喜んでもらいたい。
香織がおやすみも言わずに寝たあと、気になって部屋に忍び込んだ。不可解だったのは、お気に入りの白いコートがクローゼットの扉の前にかかっていなかったことだ。
そっとクローゼットを開けると、すべて分かった。香織の機嫌が悪かった理由も、明日、急にあのブーツを履いて行きたいと言った訳も。
クリーニング屋で働いていた経験があれば、汚れを落とすのも難しいことではなかった。
どうして汚れたのか、気になるけど、理由を知る必要なんてない。もう香織も小学五年生だ。大抵のことは一人で解決できるだろう。
親はいくら反抗されても、子供が笑顔でいてくれればそれでいい。
香織が笑ったところ、久しぶりに見た気がする。やっぱり、子供の笑顔を見るのはいいものだ。
妖精でも神でもないから、雪を降らせることはできない。それでも、子供の悩みに気づいて、それを取り除いてあげることはできる。
いつまで続くか分からない反抗期。謎解き気分で、楽しんでみますか。
笑顔で香織の後ろ姿を眺めていると、ご近所さんと目が合った。陽子は照れ笑いをしながら、玄関の扉を閉めた。
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