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第一章 月に願いを
「別れてくれないか」
何を言っているのか分からなかった。本当に意味が分からない。何を言っているの?
だって、このベッドで私を抱いたばかりでしょ?
肌を触れ合わせながら言うことなの?
「嘘……でしょ」
声が震えた。唇も震えているのが分かる。
そんな私をちらりと見た彼は、起き上がってベッドを出ると、肯定も否定もしないで服を着だした。そして、キーホルダーから私の部屋の鍵を外すとテーブルに置いて、やっと振り向いた。
「本当だ。
もう、一緒にいても楽しくないし、これ以上お互いに時間無駄にすることないだろ。前向きにならないとな」
この人は何を言っているのだろう。もし、言うことが正しいなら、抱き納めという最低な行動を取ったことになる。
「最低……」
思っていたことがそのまま言葉になった。そのとおりなのに、彼は表情を変えて私を責めてきた。
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