プロジェクトが始動します

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「なら、まずは平林さんのポジションを目指します! そこから段々ステップアップすればいいですよね!」 「ステップアップ? 何のっ!?」  話に全くついていけない。遥の頭の中はどうなっているのだろうか。  遥は今更それを聞くのか、といった、きょとんとした顔をして、飄々と言い放つ。 「決まってるじゃないですか。俺が高槻さんに男として見てもらえるための、ステップアップです」  亜耶は思わずテーブルに倒れこんだ。 「いや、あのね……」  仕事をやる上で、男として見られようが見られまいが、全く関係ないのだが。 「汐見君」 「遥、って呼んでください」 「へ?」  変なところから声が出た。自分でも、これまで聞いたことがないような声だ。  遥の口元が緩やかな弧を描き、魅惑的な表情を形作る。それはもう、吸い込まれそうなほどの──。 「俺も、亜耶さんって名前で呼んでいいですか?」 「え、な、名前?」 「本当は、亜耶って呼びたいんですけど、さすがにまだ早いですよね。でも、いつかそう呼べるようなポジションを目指すんで、よろしくお願いします!」  よろしくお願いされても困るっ!!  心の中ではそう叫んでいた。しかし実際には、ポカンと間抜けな表情を晒しているだけだ。頭の中では、何が起こっているのかがさっぱり理解できていない。処理が追いつかないのだ。
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