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「それに……そろそろ、亜耶ちゃんにも恋愛に前向きになってほしい。あんなクソみたいな奴ばかりじゃない。でも、いきなり恋愛しろって言ってもそれこそ無理だろう? だから、恋愛したい人の気持ちになって、彼らがどんなアプリなら喜んで使ってくれるかを考えてほしいんだ。恋愛したいと思えるようなアプリを作ってほしい。それが……亜耶ちゃんにとってもリハビリになると思うんだよ」
「……」
あれ以来、恋愛には見向きもしていない。もう報われない想いなんて抱えたくはない。仕事なら、やればやった分報われるのだから、そっちの方が全然いい。
そんな亜耶を天王寺が心配しているのは知っていた。天王寺だけではない、智沙もおおいに心配していた。
天王寺の言葉を聞き、この件に関しては智沙に言いつけても無駄なことを悟る。天王寺はすでに智沙に相談し、その上で亜耶にこの話をしている。それを確信した。本当に、どこまでも食えない男だと思う。
「亜耶ちゃん……」
天王寺が様子を窺うようにチラチラと視線を寄越す。
亜耶はこれみよがしに、思い切りハァーッと息を吐き出した。
「リハビリ云々は置いておいて。仕事は仕事だと割り切ります」
「亜耶ちゃん!」
「だから、ここは会社で、今は仕事中です!」
「……う」
言葉を詰まらせる天王寺を見て、小さく笑う。
四十半ばだというのに、時々仕草や表情が幼くなるのはどういうことなのだろうか。またそれが、そんなに違和感がないのが恐ろしい。
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