仕事に嫌とは言えません

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「そして、企画側からもう一人、(ひら)ちゃんを選出した」 「なるほど。パシリ要員ですね」 「おいおい……。でもまぁ、こき使って鍛えてやって」  二人して酷いことを言っているが、名前の挙がった「平ちゃん」というのは、平林(ひらばやし)祐司(ゆうじ)という亜耶直属の部下だ。  普段から亜耶のアシストをやっていて、平林もまた、亜耶に懐いている。亜耶にとっては、部下でもあるが、弟のような存在だった。  明るいムードメーカーで、仕事は速い。しかし、おっちょこちょいなところもある。まだまだな部分もあるが、よく知る人物なだけに心強い。 「そして、システム開発側からも三人選んだ」 「はい」  亜耶たちは企画や運営など、アプリの制作に入る前段階や、出来上がった後の部分に多く関わるが、実際にアプリを作るのはシステム開発部だ。  彼らに制作の意図や狙い、どういったものを作ってほしいのかを詳細に伝える必要があり、ここにズレが生じると、時間も労力も無駄になってしまう。  なので、フュージョンソフトではあらかじめプロジェクトチームを作り、最初のヒアリングの段階から、全員が顔を合わせながら制作を進めていく形式を取っていた。 「まず、開発側のリーダーは、(はるか)だ」 「遥……? あぁ、汐見(しおみ)君ですね」 「うん。彼にとっては初めての大きな仕事で、初めてのリーダーだ。いい経験をさせてやってほしい」  初めてか……と、少し項垂れるが、企画側の方は文句のない人選なのだから、ここは多少目を瞑ろうと思い直す。
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