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「湯島君だ。でも、彼はある意味、遥より年寄りくさいな」
「うわー、ひどい言い草」
「所謂さとり世代っていうのかな? 欲がなくてガツガツしてないんだよね。言われた仕事はきっちりやるんだけど、それ以上はってタイプ」
「それ……一番困るんですけど」
言われた仕事ができるのは、ある種社会人としては当たり前のことだろう。言われなければできないのであれば、常に指示を出さなければいけないことになる。それはそれで、とても面倒なのだ。
「まぁ……湯島君は開発側だし、あっちのリーダーに何とかしてもらいます」
「そうだね。ま、彼にも刺激を与えたいんだよ。必死に何かに取り組んで、何かを成し遂げる、そういった達成感を知らないだけだと思うから」
「で、あとの一人は?」
これ以上気持ちが沈むのは、この後の仕事にも差し支えそうだ。亜耶は先を促す。
すると天王寺は、ニッと明るい笑みを向けた。
「最後にはちゃんと上げるって! あとの一人は、あかりんだ」
「……よかった。最後にいい子がきた」
「彼女とは前にも組んだことあったよね。仲もいいみたいだし」
「はい。彼女は信頼できるいい子です。仕事もできるし」
天王寺が「あかりん」と呼んだのは、システム開発部のグループリーダーを務める落合灯里だ。亜耶が入社して、初めて手掛けたアプリの制作で組んだ相手だった。
年下だが、サバサバした姉御肌な人柄で、目を引く美人。ただその中身は、おっさんという残念美人だ。
飾らない性格と、仕事に対する責任感と向上心は亜耶も一目置いていて、また彼女の方も亜耶を認めてくれている。灯里とまた一緒に仕事ができるのは、亜耶にとってかなり嬉しいことだった。
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