プロジェクトが始動します

15/26
2646人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
「おとっ……男としてって……や、やだなぁ! 汐見君は男でしょうが! うんうん、ちゃんと男性だよ。めちゃくちゃイケメンな男性……」 「そういうんじゃないです」  話を逸らせようと笑って誤魔化したのに、逃げ道を塞がれてしまう。  一体どういうつもりなのか。  遥なら、どんな女もよりどりみどりなはずだ。なのに、どうして取るに足らない自分などに、こんなに真剣な表情を向けるのか。  十も上で、仕事一辺倒な上に頑固で、きっと普通の男は扱いに困る。おまけに、結婚直前に婚約者に逃げられるという恥ずかしい過去まである。いいとこなしではないか。  戸惑いの表情を見せる亜耶を慮ったのか、遥は再びしゅん、とした顔をして、亜耶の手を離した。こんな顔をされると、まるで自分が悪いことをしている気分になる。 「汐見君……」 「すみません、俺、焦りました」 「焦る?」  遥はコクンと頷いた。 「高槻さんと二人だけで食事ができて、舞い上がってました」 「あの……」  舞い上がるとは言いすぎだ、自分はそんな人間ではない。そう言おうとすると、遥が俯けていた顔を上げ、亜耶を真正面に見据え、言った。 「いきなりは難しいですよね。うん、俺が悪かったです。いきなり男としてなんて、無謀でした」 「は、はぁ……」 「だから、最初は弟みたいな感じでいいです。パシリみたいな舎弟とか! あ、企画の平林さんって高槻さんの部下で、高槻さんも可愛がってるって聞きました」 「え、あ、うん」  前のめりになる遥に、またもや亜耶は仰け反る。一体何が起こっているのだろうか。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!