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「うわぁ、怖いなぁ。もしかして、智沙に言いつけちゃう? 亜耶ちゃんが智沙に言いつける度に僕、怒られるんだよなぁ……」
「部長、ここは会社です。ちゃんとしてください」
「う……。わかった、そうだね。ちゃんとするよ」
これでは、どちらが上だかわからない。
しかし、亜耶はわかっている。これも天王寺の手なのだ。その証拠に、天王寺の眉は情けなく垂れ下がり、目が若干こちらを窺っている。困っている自分を見て、亜耶が折れるのを待っているのだ。
亜耶はわざと大きな溜息を零し、天王寺に先を促した。
「このままじゃ話が進みません。どうぞ」
「よかった! じゃ、進めるね。……高槻さんには一旦「PicMoK」のプロジェクトから外れてもらって、新規プロジェクトのリーダーになってもらう」
亜耶は再び溜息をつく。
「高槻さんが「PicMoK」に思い入れがあるのはわかっている。でも、今回のプロジェクトは、久々にうちが主導の大きなプロジェクトだから、ぜひ高槻さんにやってもらいたいんだよ」
これが天王寺の手だとはわかっていても、こう言われてしまうと弱い。ぜひ、などと言われると、自尊心がくすぐられ、悪い気はしない。
「……どんなアプリを作るんですか?」
これを尋ねた時点で、受けると言っているも同然だ。しかし、自社主導の大きなプロジェクトとなると、関わりたくなるのが人情というものである。
亜耶の反応を見て、天王寺がまたニコニコ笑顔になった。
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