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「恋愛マッチングアプリ」
「は……?」
思わず間抜けな声が出た。
恋愛マッチングアプリ……? 気軽に男女が出会えるという、あれのことか……?
それ以外ないにもかかわらず、亜耶は他に何かないかと考えてしまった。
「あれ? まさかマッチングアプリを知らないはずないよね……? えっと、出会い系アプリって言えばわかる?」
相変わらず眉を下げたままの天王寺を見据え、亜耶は言った。
「無理です」
「即答!?」
「部長は私の事情をよーーーーーっくご存知ですよね? なのに、恋愛マッチングアプリを作れとか言います? うわー、もう絶対に智沙に言いつけます! これ以上ないほど向かない仕事を押し付けられそうになってるって泣きついてやるっ!!」
結婚目前で婚約を破棄されるという痛い経験を、もちろん天王寺も知っていた。それが原因で亜耶は前の会社を辞め、ここに来たのだから。
「それは止めてっ! いや、えっと、亜耶ちゃんの事情はよくわかってるよ、わかりすぎるくらいにわかっている!」
「だったら、どうしてそんな仕事を振るんですか!」
「亜耶ちゃんを頼りにしてるからだよ!」
「……」
「頼りにしている」、その言葉に途轍もなく弱いのだ。頼りにされると嫌と言えない。というか、言いたくない。
天王寺は卑怯だ。そう言えば、亜耶が断れないのを承知で言っている。
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