1953人が本棚に入れています
本棚に追加
「悠斗さんはマスターと仲が良いからそういう話も詳しく知ってるんですか?」
「まぁ俺も同じだから。」
「え?同じ?それは......」
静香がそう言いかけた時。
「あのさ、あいつ寝てると思うけど入っていったら?もうだいぶ良くなったし喜ぶよきっと。」
「え?!」
悠斗が静香の言葉を遮って店の中に入るよう手招きをした。
おずおずと中に入ったところでバタンと外からドアを閉められる。鍵をかけて悠斗はいってしまった。
(待ってこの状況変じゃない?)
呼んでもない相手が連絡もしないで家まで来てしかも勝手に中に入ってきている。それだけ聞くとまるでストーカーの所業だ。
顎に手を当ててマスターはどう思うのだろうと静香は考えた。
(連絡して来なかったということは知られたくなかったんじゃないのかな...。)
しかし時既に遅し。内側から鍵を開けて帰っても、鍵を持っていない静香は外から鍵がかけられない。
(無用心だもんなぁ。だったら...。)
目の前にある2階へと上がる階段に目を向けて静香はゴクリと息を呑んだ。もう進むしか道はない。階段を登り2階の部屋に向かう。
しかしその時、重大なことに気がついた。
(2階の部屋の鍵ないじゃん...。)
お店から直接行けることもあり、2階の自室のドアには普段鍵をかけていると以前マスターに聞いていた。
(確か悠斗さんがマスターは今寝てるって言ってたような。)
しばらく考え込んだ結果、意を決してインターホンを押す。
ピンポーン。
「......。」
(うん。やっぱり帰ろう。)
静香は潔く諦めた。
(今すぐ店を出て悠斗さんを探せば......)
振り返り階段を降りようとする。
ーーガチャ。
「っ悠斗。鍵開いてるのに嫌がらせですか。」
「?!」
パッと向き直ると髪の毛をかき上げながらマスターが不機嫌に下を向いたままドアを開けた。
(ひーーー!)
いつもの完璧なマスターの姿とは反対に隙だらけの素の姿に静香は心の中で発狂した。
「悠斗聞いてます...か....えっ......?」
マスターが顔をあげるとそのまま二人は顔を見合わせて静止し沈黙が流れた。
「あ、こ、こんにちは。そこで悠斗さんと会って...。」
静香が少し怯えながら笑いかける。脳内はもうパニック状態だ。
(ほらほらほらやっぱり驚いてるてか引いてる。今すぐ走ってこの場から去りたいー!)
「...っあいつ。」
マスターはかき上げていた手を顔に当てため息をついた。
(うぅ...やっぱり迷惑なんだ。)
「あの!す、すみません!すぐに帰ります!では!」
「えっ?!あっ待ってください!」
ーーーガッ。
慌てて階段を駆け下りようとすると、後ろからマスターが静香の腕を掴んだ。
「静香さん誤解です!」
「え?.......でも」
「いや本当に...」
「?!」
マスターは突然その場に力無くへなへなと膝をついた。
「マスター?!大丈夫ですか?!」
「......すみません病み上がりであまり力が入らなくて。」
最初のコメントを投稿しよう!