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「め、滅相もないです!
じゃ、じゃあ、わたしは帰ります」
慌てて体を離すと、天翔さんが笑った。
「タクシー呼ぶからおいで」
いいです、と断ったのに天翔さんは聞いてくれず、病院の外まで見送りに来てくれた。
「電話番号、何番?」
「え……?
あ、えーと、」
携帯の番号を告げると、天翔さんは何かに書く様子もなく、「了解」と言った。
ま、まさか今ので暗記できたとか……?
タクシーが到着して乗り込むと、「忘れ物」と言われて。
顔を上げた瞬間、ちゅっと軽くキスをされた。
同時に何かを手の中に滑り込まされて、呆気にとられているうちにドアが閉まり、救急車のサイレンが近づいてきた。
表情が締まり、仕事の顔になった天翔さんが救急外来へ歩いていく。
あ……撃墜。
悪戯な笑みをうかべて意地悪で弄られてばかりだったのに、仕事モードのギャップを見てしまったら、否応なく落っことされた。
心臓が太鼓みたいドコドコうるさい。
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