一章 大樹

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「それから、皆さんに伝えたいことは──」 春。4月。 やっとこの日を迎えることができた。 夏から黄金の勝利の動向をネットで調べに調べ、行き先を突き止めた私は今、その会社にいる。 『ArtsUtopia(アーツトピア)株式会社』 ここに、黄金の勝利(かのじょ)がいる。 2010年に開業したこの会社は、顧客に絵を通して嬉しさや幸福を感じてほしい思いで『art』×『utopia』を組み合わせて創られた。 現在従業員は300人前後、支店の数は30。1つの支店に10人前後所属し、東京と神奈川が中心。 更なる拡大と上場を考えているというベンチャー企業。 美術商の拡大は難しいにも関わらず、ここまで拡大したのは、提携先が多いということと、それぞれの支店で得意な分野が異なるということだ。 美術館への『黄金の勝利』の引き受けも、小さい老舗では、気味悪がって嫌がるところもあったよう。『ArtsUtopia株式会社』は、独自のパイプがあることや発展するために注目度を上げること、そして、『黄金の勝利』をエンターテイメントの材料として考え、引き受けることにした。 だから、テレビでは気味悪がって、ニュースには全くならなかったけど、ネットでは大騒ぎですぐに知ることができた。 問題は、黄金の勝利(かのじょ)に会うために、300人のディーラーを相手にしなければならないということだ。
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