一章 大樹

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黄金の勝利は、各支店をゆっくり回り、購入したい人を集おうとしているらしい。その期間は、3年から5年。 つまり、私は最低でも3年で営業成績をベテランと同じくらいとらないといけない。 「……であるからに……」 あー、早く会いたい。 いやいや、でも、すぐに会えちゃってもなんの感動もないから、まだいいや。 とにかく、仕事をできるようにならないと。 絵の勉強はある程度した。 単純に、面白かった。 『黄金の勝利』以外の絵画も、歴史があったり、作者の想いがのっていたり、それを売るんだからきっと楽しくてやりがいがある。 楽しみで仕方ない。 「そのため……」 にしても社長の話が長い。 早く終わらないかな……。 校長先生かよ。 人口密度が高くなって酸素濃度の薄い会場で、欠伸を必死に耐える。全く話の内容が頭に入ってこない。 私の頭にあるのは、黄金の勝利(かのじょ)のことだけだった。
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