一章 大樹

5/21
前へ
/645ページ
次へ
「は、初めまして。本日から宜しくお願い致します! えっと、山崎と申します」 うまく舌が回らない。 見た感じ、あまり年齢は変わらないようなんだけど、なんか威圧感を感じる。切れ目だからなのか、オーラなのか、よくわからないけど。 「ああ。宜しく」 「私は何をしたら良いですか?」 「……新卒だったな」 なんだ? 新卒だから、それに見合った仕事をくれるのだろうか。 「考えもせず人に聞く、典型的なパターンか」 ……は? 待て、今、なんと? 「社会経験は?」 「短期バイトを少し」 「ハッ」 いきなり嘲笑されては、どう反論していいかもわからず、私は立ち尽くすしかなかった。 「え。あ、の……」 「まだいたのか。考えて働けよ。新卒なんて出来ることなんて、簡単なものしかできないだろ」 ……。 どうしよう。 これ、やっていけんのかな。 言葉も出ず、変な動悸が襲ってきた。とにかく、ここから離れないと。 やっとの思いで足を動かし、机に戻った。 会社ってこういうもんなの? 私が、社会人経験ないのがいけないの? 挨拶がいけなかった? 何がいけなかった……?
/645ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加