一章 大樹

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「見たときに電気が流れまして。『黄金の勝利』が時代を変えるならば、私は時代が変わるところを見てみたいと…… 」 なぜ、私の夢なのに、瀧澤さんに頷かれたくて正解を探しているんだろう。 正解なんて、ただ、これだけなのに。 きっと、彼には否定されるのに。 「精神年齢低いな」 ほら。きた。 「まさか、それだけでディーラー目指してるわけじゃないよな?」 「……」 「この世界はそんな甘くない。その淡い夢も儚く泡になる。お前はもう少し仕事というものを考えた方がいい」 ハイボールを一気に飲み干すと、瀧澤さんは私を睨み付けた。 「そもそも、黄金の勝利のディーラーになるのにどうするか計画してるのか?」 「それは、もちろん絵を売って営業成績を上げて……」 「上げたら、黄金の勝利のディーラーになれるのか?」 「いや、もちろん他にも色んな仕事をできるようになったり、知識を蓄えないといけないとは思いますが……」 「知識を蓄えるってどうやるんだ? その知識と絵を売ることはどう繋がる?」 「とにかく本を読みます。知識があれば絵を売ることにも役立つかと。その絵の背景を気に入ってもらうことで、買いたいと思う人もいると思いますし」 なんなんだ、ほんと。 バカにしてるわりには、よく聞いてくる。
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