序章 黄金の勝利

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愛海(まなみ)?」 大きな力の前では、人間は抗うことができない。 作者は何を思って、描いたのか。 「ちょっと! 大丈夫!?」 友人の紗綾(さあや)がガッと肩を掴んで揺すってきた。 ハッとする。 「どっか飛んでた?」 「ごめん。圧倒されてた」 「この絵?」 「そう。この絵」 夏休み。大学生なんて暇なもんで、旅行の予定を立てた。 紗綾と二人で、柄にもなく、徳島の美術館を訪れた。 そこで再会した絵画を私は食い入るようにみていた。 目の前にそそりたつ女性。 西洋美術というのだろうか。ヨーロッパにありそうな繊細な絵ではあるけど、その女性は祈りのポーズをしている。 彼女の足元には神秘的に水が描かれ、その水は螺旋を描き、彼女を包んでいるようだ。彼女の頭上には黄金の太陽。後光みたいに彼女を照らしていた。 ここまでなら、多分私はあまり心を惹かれない。 そもそも絵画はよく知らない。 何に惹かれているのか。 「この絵の何に圧倒されるわけ?」 「──目だよ、目」
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