序章 黄金の勝利

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「その後も色々な方が『黄金の勝利』を手にして参りました。その度に……」 「何か起きたんですか?」 「えぇ。タイトル通り、勝利や名誉、成功を遂げた方もいらっしゃいますし、逆に悪い方向に導いてしまった方もいらっしゃいます」 「へ?」 「ある国の証券会社の倒産によって世界的大不況が訪れたり、投資家が未来から来たと装って大地震の予知をネットの掲示板で書いて本当になってしまったり……。これらは『黄金の勝利』を手にしたものです」 ごくりと息を飲み込んだ。 全身に電気が走ったような感覚。 気づけば鳥肌が立っていた。 だって、大不況も、大地震も、そのあとの日本を大きく変えた。時代を変えるという意味がよくわかった。 「その後、この美術館にやって参りました。持ち主が気持ち悪がったのです」 自分の息が乱れているのがわかる。 もっとこの絵を知りたい。 単純にそう思った。 「この絵は人を選びます。この美術館は国営で人ではないので、そういった時代変動はございませんが、また人の手に渡れば大きく時代が変わるでしょう。そして、それは近いうちにあります」 声も出せずにスタッフの女性をまじまじと見つめると、彼女は目を細めた。
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