六章 夜明けの先に

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 時が過ぎて、大人になって。  私は相変わらずあの日のことを許していないし、  私は相変わらず仏頂面で、  相変わらず毎日が苦しくて、  相変わらず幸せ貯金を貯めるのが下手くそで。  だけど今日からまた、もう一度始めてみようかな。  昔みたいにとはいかないだろうけど、こんなにも幸せを願ってくれている人がいるんだからきっと見つけられる。  そしていつか、願ってもらうだけじゃなくて、ちゃんと願ってあげられるように。  少しずつ、少しずつ、焦らずに探してみよう。  「私、ファンタジー読まないって言ったのに」  そう呟いて本をテーブルに置いた刹那、カーテンの隙間から白い光が差し込んだ。  顔をあげて、立ち上がる。  窓に歩み寄って、勢いよくカーテンを開けると眩しいほどの光に包み込まれた。  うっすらと瞼を開けると、藍色に染まっていたはずの空が、次第に霞がかった青色へと移り変わっていくのが見えた。  ああ。  少しずつ、夜が明けて行く。
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