一章 朝ぼらけの出逢い

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 三年前、私が小学六年生になる直前に今のマンションへ引っ越してきた。校区内での引越しだったので学校は変わらなかったけれど、我が家はトイレ付きユニットバスに変わった。  「ホテルみたいでいいだろう?」という父の言葉に騙されていたのだ。今思えば家賃を安く済ませるための作戦だったのだろう。  そういう訳で誰かがトイレを使うためにドアの鍵を閉めてしまえば、必然的に洗面台もお風呂も使えないことになる。  そして今日は、じゃんけんに負けて嫌々引き受けた風紀委員の当番の日。朝早くから校門に立って、登校する生徒たちの服装をチェックしなければならない最悪の日だった。
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