六章 夜明けの先に

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 『いい事なんて何もない』  そう決めつけて、全部を恨んでいた中学三年生のあの頃。  憧れていたきみの見る世界を、手を繋いで冒険した。  目を閉じれば今でも、鮮明に思い出すことができる。  勇者の剣で倒したドラゴン、  星が降る夜に月を目指して舟を出したこと。  きみが見せてくれた世界や幸せは、すべてが輝いていた。  ねえ、ハルカ。  あの日突然別れを切り出されて、散々ハルカを恨んだよ。  不幸の手紙を送ってやろうかとも思ったし、「地獄のどん底に落ちやがれ」って思ってた。  ハルカがどうして別れを選んだのか、分かっていたけどわかりたくなかった。  分かってしまえばその先、ハルカのことを恨めなかったから。
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