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一章 朝ぼらけの出逢い
藍色が溶けだした朝の空は団地の間から眩しい光を放つ。こぼした息はまだ白く、張りつめた空気が頬を刺した。
まだ薄暗いこの道を、古ぼけた自転車で突き進む。
人気のない往来に、ギーコギーコ、シャッシャッ──自転車の今にも潰れてしまいそうな音がむなしく響いていた。
「ああもうッ。当番に遅刻したら絶対に父さんのせいだから! トイレに新聞持ち込んだ時点で怪しいとは思ったけど、まじで籠りすぎふざけんなッ」
今朝からずっとトイレに籠っていた父さんを思い浮かべて勢いよく悪態をついた。
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