消えないアバウト

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消えないアバウト

私は大雑把な人が嫌いだ。 『適当に捨てといて』 私は言われた通り、散らかったゴミを袋に入れた。 ふぅ、と一息付いて、急須に茶葉とお湯を入れる。 「久々に動くと痛むなぁ」 私はお茶をすすりながら、痛む足腰をさすった。 流石にこの歳になってくると、体のあちこちにがたが来る。 「ほんと、こんなに散らかして」 私は大雑把な人が嫌いだ。 あの人はいつもそうだった。 『まあ、そのうち何とかなるよ』 とか 『適当でいいんだよ。気楽に』 とか。 私は大雑把な人が嫌いだ。 あれは、二人で旅行に行ったときの事。 ネイ・ガノへ、温泉に入る猿を見に行った日の昼過ぎ。 『あーあ、積もってきちゃったよ』 記録的な豪雪によりあたり一面は銀世界に。タイヤチェーンを持っていなかったので車での移動はあまり現実的ではない。 『近くの宿を探せばいいんだよ』 あの人と一緒にあちこち歩き回ったが、連休中の繁忙期なため、空いてる宿なんてなかった。 『こんな時、あって良かったキャンプグッズ』 そんな風に、気楽なあの人は車の荷室からテントや寝袋を取り出し始めた。 『こういう方が思い出にもなるだろう』 なんて言ってたけど。羽毛の寝袋は、思っていた以上に暖かかった。 私は大雑把な人が嫌いだ。 片付けを終え、あの人へ線香を手向けた。 こんなに私にあれこれ残して逝ってしまうなんて、迷惑な話だ。 『俺が死んだらせいせいするか?』 なんて言ってたけど、むしろ余計に面倒が増えてしまった。 大雑把なあの人がいなければ、私が片付けるものが無くなってしまうではないかという新たな問題にも直面してしまった。 『いつもいつも、迷惑かけてごめんな』 なんて言ってたけど、私があの人の迷惑に、どれほど救われてきた事か。 私があなたの為にしてきた事は、あなたの為なんです。 そう言う所を理解してないあたり。 『こんな俺と、今まで一緒にいてくれてありがとう』 なんて言ってたけど、そんなあなただから一緒にいたんですよ。 私がこうして少しでも気楽に生きてこられたのはあなたのおかげなんですよ。 私は、大雑把な人が嫌いだ。 嫌いだ。
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