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ボーボーさん
「なあ、ボーボーさんって知ってるか?」
「ああ、都市伝説だろ?」
俺はアクビをしながら答えた。
「そう。ボーボーさんの姿を見ると、たちまち生命を抜き取られるらしい」
彼は続けた。
「対処法は、『何かお手伝いしましょうか』と聞くことだ」
彼は得意げに語った。
「まあ、所詮都市伝説だろ?」
俺は適当にあしらうように返事した。
「オアァ……」
いつも通りの帰り道。の筈だった。
「………」
目の前にいるのは、直径30cmほどの小さな毛むくじゃらの生き物。
「オアァ……オアァ…」
聞いたこともないような変な鳴き声。とりあえず俺は声をかけてみる事にした。
「何かお手伝いしましょうか?」
目の前にいたそれは、驚くように振り返り、俺のズボンの裾を引っ張った。
「…付いてこいって事か?」
それは、2回頷いてそのまま歩き出した。とりあえず俺は着いていくことにした。
多分これが、彼の言っていた「ボーボーさん」なのだろう。姿を見てみればなるほど、毛むくじゃらの姿はまさしくボーボーだ。
たどり着いたのは、河川敷の草むらの中。高い草をかき分けて進んだ先には、怪我をした猫が横たわっていた。
「オ…たすケて……」
ボーボーさんが喋った。
「なんだ、お前いいやつだったのか」
ボーボーさんはみるみるうちに弱っていく猫を眺めて心配そうにしている。
「義理はないが……」
俺は人差し指に力を込めた。
「大地よ、森よ、救い給え」
指先から放った魔法は、猫を鮮やかに包み込み、猫の傷跡を塞いだ。
「…よし、次はないからな」
猫を撫でると、少し嫌そうにその場から去って行った。
「オ……あリがと…」
俺はボーボーさんの頭に手を置いた。
「俺じゃない、あんたが助けたんだ」
ボーボーさんは不思議そうに首をかしげた。
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