男漁師!銀三郎

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男漁師!銀三郎

マグロ漁師の朝は早い。 銀三郎は早朝3時、船を出した。 「この時期に備えて用意したんだ」 そう自慢気に語る銀三郎。彼の指差す先には巨大なウインチが。 「5トンまでの荷重に耐えられるんだ」 言いながら、ウインチの先のフックにイカを固定する銀三郎。 彼が狙うのは『オオヒゲマグロ』。最大で体長3メートル、重さは500キロにもなる大物だ。 「こうやって船を移動させて、イカを流すんだ」 長年の知恵とソナーを頼りに群れを探す銀三郎。 しかし一向に群れは現れない。 「しばらくここで待とう。奴らは必ずここに現れる」 にわかにカモメの群れが集まり始めた。 「しめた」 ソナーにも魚の群れの反応が。 再び船を走らせる銀三郎。 そしてついに。 「来た!」 素早くウインチの操作レバーに手を掛ける銀三郎。ウインチは唸るようにキュルキュルと轟音を立てる。 「なんて重さだ!」 もしここで力加減を誤れば、魚を逃したり、最悪ウインチが破損してしまう事もある。繊細なレバー操作で、着実にワイヤーを手繰り寄せる。 「しまった、また走られた」 ワイヤーが出ては巻き取ってはを繰り返し、いよいよ獲物が姿を表した。 「大物だ!」 体長2mは優に超えているであろう、巨大なオオヒゲマグロが、水面から飛沫を上げて飛び出した。 そして、その瞬間大きな波が船を打ち付ける。 まるで、オオヒゲマグロの怒りに海が答えているかの様だ。 「電気ショックだ!」 ワイヤーに電気ショックを与える装置を取り付け、マグロに向かって放つ。少しづつだが、オオヒゲマグロも弱ってきている様だ。 しかしここでアクシデントが。 最後の力を振り絞り、オオヒゲマグロが深く潜った事によりウインチが故障。正常な動作が出来なくなってしまった。みるみるうちにワイヤーが出ていく。 「まずい!」 急いで手動モードに切り替える銀三郎。ハンドルを取り付け、自分の手でワイヤーを巻き取っていく。 こうなれば、あとは銀三郎とマグロとの体力勝負だ。 「おおおおおおお!」 叫び声を上げる銀三郎。相手は体重500キロにもなる巨大魚だ。 そしてついに、船の際まで手繰り寄せた。 その場で、トドメを刺し、ギャフを使い船の上に乗せた。 体長3.4m、重さはなんと563キロの大物だった。 「一時はどうなることかと思ったが、何とかなった」 そう、嬉しそうに話す銀三郎。 その金額は、推定2000万円。巨大ウインチを修理してもお釣りが来る程だ。 銀三郎は「俺はこう思うんだ。この海には、これのもっともっと大きなのがいるんじゃないかってな。いつかはそんな大物を釣ってみたい」話す。 漢漁師、銀三郎は今日もまた、夢を追い求め海へ駆り出すのだった。
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