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牛
突如として現れた謎の組織「ワルワル団」。
彼らは暴虐の限りを尽くし、街は瞬く間に阿鼻叫喚ひしめき合う地獄絵図と化した…。
絶望の最中、人々は希望の光を見る!!
ただ一人、ワルワル団の前に立ち塞がり、人々へ救いの手を差し伸べる男!
彼の名は、Mr.ホルスタイン!!
「えーん、えーん」
俺は勇気を振り絞り、公園の隅で泣き声を上げる少女へ近付いた。
「お、お嬢ちゃん…、どうしたの?」
少女は奥の背広を着た男性を指差した。
「あのおじちゃんに風船とられたの…」
俺が男性を見つめると、男性は肩を揺らして笑い始めた。
「クククッ、バレちゃ仕方ねェ」
男性は振り返り背広を空高く放り投げると、瞬く間に悪の怪人へと変身した。
「このラーテルガー様が相手してやる!消えろMr.ホルスタイン!!」
「させるかっ!」
俺は素早く腰のベルトへ手をかざす。
「少女の風船を奪い去り、悲しみをもたらすその所業…許せん!」
ベルトはその輝きを増し、俺の体は光に包まれる。
「変身、Mr.ホルスタイン!」
…決まった!
「ほう、ここでMr.ホルスタインに出会えるとは。いいだろう、ここがお前の墓場だぁ!」
「ゆくぞ!」
俺はラーテルガーの攻撃を躱し、ボディーブローを炸裂する。
「んん、何かしたか?」
全く効いていない様子のラーテルガーに反撃をくらい、のけ反ってしまう。
「うっ、効かないだと!?」
「そうさ。ラーテルは小柄だが、その実ライオンに牙を向くほど獰猛…。それは、分厚い皮膚による鉄壁の防御からくる自信故…!」
俺は必殺技のパワーを貯め、ラーテルガーに炸裂させる。
「関係ない!必殺『蹄鉄百列パンチ』!」
金属の拳から放たれる重いパンチを、目にも止まらぬ速さで叩き付ける大技だ。
「うおおおおおおお!!」
そして、最後の一撃。これをまともに食らってなお、ラーテルガーの姿勢は崩れない。
「クククッ。そんなマッサージみたいなパンチしかできねえのか?」
「クッ…」
「今度はこっちからいくぜ?」
ラーテルガーの素早い反撃に反応しきれず、爪の引っ掻き攻撃を食らってしまう。
「ぐはっ!」
「まだまだぁ!」
今度はラーテルガーが素早い引っ掻き攻撃を繰り返す。俺は必死に防ぐが、防ぎ切れず何度も当たってしまう。
「トドメだァ!『クロススラッシュ』!」
ラーテルガーの両手から放たれる斬撃に、いよいよ俺は膝から崩れ落ちた。
「クッ、なんて強さだ…」
「クククッ、俺は今までのショボい怪人とは訳が違う。なぜならラーテルは生態系のトップに立つ、まさに百獣の王なのだからな!!」
その時、後ろから聞こえてきたのは、俺を応援する声だった!
「Mr.ホルスタインー!頑張れー!」
「負けるな!Mr.ホルスタイン!」
「ラーテルガーなんてやっつけろ!」
「み、皆…!」
その時、皆の声援が力となり、Mr.ホルスタインの新たな力が目覚める!
「な、なんだその姿は!?」
全身に漆黒の装甲を纏い、頭には一対の大角を携えたその姿。まさに
「バッファローフォルムだ!!」
俺は勢い良くラーテルガーに突撃する。
「喰らえ!渾身の『水牛タックル』!!!」
「クッ」
ラーテルガーは咄嗟に防御姿勢に入る。
「クククッ、これしきの攻撃!!」
俺はさらに角に力を込める。
「オオオオオ!!」
「なっ、バカな!俺の防御が押されている!?」
「『水牛ヘッドバット』!!!」
「ぐあああああああ」
ラーテルガーは膝まずき、俯きながら喋る。
「クッ、今回はこれくらいにしておいてやる……!覚えておけ!」
そう言い放ち闇の中に消えていった。
俺はラーテルガーが残していった風船を手に取り、少女に渡す。
「はい、お嬢ちゃん」
「ありがとう、Mr.ホルスタイン!」
少女が去るのを見送って、俺は一つため息をついた。
神はなぜMr.ホルスタインに俺を選んだのだろうか。できる事なら、もっとコミュ力があるイケメンにすればよかったのに。
こうして、風船は無事に少女の手に戻ったのだ。
今日もMr.ホルスタインは、人々の希望の光となり、人々の為に戦う!
ゆけ!Mr.ホルスタイン!!負けるな!Mr.ホルスタイン!!
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