ホワイト・キュラソー

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ホワイト・キュラソー

「いらっしゃい」 グラスを磨いていたマスターが、私にそう声をかけた。 「マスター」 私がマスターを呼ぶと、マスターはグラスを置いて 「いつもの、ですね」 と応える。 特に、酔って全てを忘れたい訳じゃない。ただ私はマスターの作るカクテルが好きなんだ。 マスターは、シェイカーに材料を入れると、シャカシャカと心地よい音を立てながらシェイカーを振る。 薄く緑がかった透明の液体が氷の入ったカクテルグラスに注がれる。 「どうぞ、カミカゼです」 目の前に置かれたコースターにグラスが置かれた。 淡い光が氷に反射してキラキラと輝く。 「いただきます」 口に含んだ瞬間、キリッとしたアルコール感とフワッとした甘みが広がる。それを飲み込めば、ライムの爽やかな香りが鼻を風のように通っていく。 「おいしい」 「ありがとうございます」 「ブルーマンデーが飲みたいです」 「かしこまりました」 ネットで調べたら出てきたカクテルだ。メニューには書いてなかったけど、どうやら作ってくれるらしい。 マスターは奥からこんどはシェイカーではなくジョッキのようなグラスを取り出すと、氷と一緒に材料を入れ、スプーンでかき混ぜた。 「どうぞ、お待たせしました」 鮮やかで透明な青色が綺麗なカクテルだ。 ウォッカと色付けのブルーキュラソー、そしてホワイトキュラソーが入っている。 口に入れると、一気にホワイトキュラソーの甘みが広がる。 ただし、お酒しか入っていないのでアルコールはかなりのキツさ。 酔って全てを忘れたい訳ではない、と言うのは半分ホントで半分は嘘だ。 正直な所考えたくもない。 ああ、まただ。こうして考えてしまう。 私は手元のピーナッツをかじり、酒をあおった。今日はもう帰ろう。 「お会計を」 私はマスターに直接お金を渡した。 「ごちそうさま」 「ありがとうございました、またのお越しを」
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