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てら、てら。
この季節は、私にとってはまだ少し肌寒い。
頭の片隅に残っているのは、小さな頃の記憶。
川のほとり。マスクを付けた少女が、私と一緒に腰掛けている。
一緒に歌を歌っていた。私も少女も楽しそうに歌っていた。
夕暮れ、少女は私に「バイバイ」と手を振った。私も応えるように手を振り返す。
少し名残惜しそうに、少女は橋を渡って行った。
マドイヒアガリ
タテマツリ
イトハチガヘド
ツタエント
カナヘテウタフ
少女は病気だった。
あの頃は何の病気かなんて知らなかったけど、だんだん肺がダメになっていく病気らしい。
「この人工肺、ダメかも。呼気変換があまりうまく行ってないたい。吸気効率が80%に落ちてるよ」
「そっかぁ、じゃあ元に戻すね。こんどはもっといいの作るから」
「ありがと」
その少女は今、私の隣にいる。
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