生き残った男

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「コウイチさん。あなたの遺伝子を調べた結果、あたしたちのものと、非常に近いことがわかったの。だから……もしかしたら、だけど」  そこで奈々は、恥ずかしげに俯き、コウイチの手をそっと握った。 「あなたの、子孫を。ここで『作る』ことも、不可能ではないかも、ですって……」  それを聞き、コウイチは今までとは違った意味での「衝撃」を受けていた。俺の、子孫……俺の、子供ってこと? いや、俺が地球でただ1人、生き残った男だと言うなら。それは、「すべきこと」なのかもしれない。そして、その「相手」は……。  コウイチは、自分の右手に触れている、温かい感触を確かめていた。彼女は、俺とは違う「人種」だ。さっきチラリとは見たけど、その「素顔」は、もしかしたらショッキングなものかもしれない。でも……この、感触は。病室で目覚めた時からずっと感じていたこの暖かさは、「本物」だ。一番大事なことは、それじゃないか……?  コウイチは奈々の手を取って立ち上がり、窓の向こうにきらめく星々を見つめた。 「俺達が、新しいアダムとイブってことか……」  それを聞き、奈々は悪戯っぽい微笑みで、コウイチに聞き返した。 「あだむといぶって、なに……?」  ――これから色々、教えてあげるよ。  コウイチはそう言うと、奈々の肩をそっと抱き寄せ。どこまでも続く果てしない宇宙を、じっと眺め続けていた。  
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