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こうしてコウイチは1人、更に深く思い悩むこととなった。奈々さんの態度も、奈々さん以外病室に誰も来ないのも、やはりおかしい。何か隠している。何かきっと、俺に「言えないこと」があるんじゃないだろうか……?
ではその、「言えないこと」とは何か。俺をこんな風に、ここに閉じ込めておく理由は。色々な想像、妄想が頭の中を駆け巡ったあげく。コウイチは、ある「結論」にたどり着いた。
……臓器移植。
俺は、「闇の臓器移植」のドナーとして、ここに「囲われて」いるんじゃないのか……??
俺が事故にあったというのは、本当かもしれない。しかし、酷いケガをしていたからといって、こんな風に個室に閉じ込め、長い間拘束しておくだろうか? 加えて、医師の診察もないなんて。俺のケガは、実は「大したこと」なく。どこかで裏ルートに乗せられ、移植する対象者の準備が出来るのを待っている段階なのでは……?
映画や小説の世界では、そんな「闇の移植ルート」みたいなものがあると聞いたことがある。しかもそれはフィクションではなく、「実際にあること」なのだと。そう考えると、思い当たるフシが多い。拘束しておくのは、もちろん逃げ出さないため。看護婦しか見に来ないのも、もともと大したケガではないのだから、栄養を与えて健康状態を維持するだけでいいからだ。
そしてきっと、奈々さんも「組織」に脅されているんだ。コウイチは、好意を感じた奈々への「自分勝手な解釈」だとは思ったが、どうしても奈々が「悪人」には思えなかったのだ。何かやむを得ない事情で、奴らに協力するしかない状況に置かれているんだ。だとすれば……?!
コウイチは、一刻も早くここから逃げ出さねばと、計画を練った。やはり、奈々しかいなかった。俺を、ここから「出して」くれるのは……。
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