生き残った男

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 次の日。いつもどおりに病室へ来て、ベッドの傍らにある椅子に腰掛けた奈々に、コウイチは少し苦しそうな声で訴えた。 「奈々さん、悪いけどさ。昨日の寝方が悪かったのか、ベルトで押さえてるところが、何か痺れてるみたいなんだ。ちょっと、緩めてもらえないかな……?」  奈々は、ちょっと驚いたようにコウイチを見つめ。しかしすぐに、「じゃあ、少しだけなら……」と、コウイチの腕を拘束しているベルトに手をかけた。よし。奈々さんには、ほんとに申し訳ないけど……! ベルトが緩み、コウイチの手が多少、前後に動かせるようになった、その隙を。コウイチは見逃さなかった。  コウイチは、ベルトから「さっ!」と右手を引き抜くと。奈々の脇に置いてあった銀のトレーから、注射器を奪い取った。「あっ?!」奈々が驚いている間に、左手も引き抜き。そして「ぐいっ」と、奈々の首を掴んで、自分の胸元に引き寄せた。 「コウイチさん、な、なにを……?」  少し怯えたようにコウイチを見つめる奈々の視線に、コウイチは胸が痛んだが。でも、始めたからには、やるしかない。 「奈々さん、ほんとにごめん。でも、俺はここを出たいんだ。協力してくれ。さもないと……!」
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