生き残った男

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   コウイチが長い眠りから覚め、真っ先に感じたのは。目を突き刺すような、真っ白な光の洪水だった。コウイチの視界全部が、異なる色彩の侵入を拒むかのごとく、完全に白く覆われていた。  一瞬コウイチは、いったい何が起きたのか、自分がどこにいるのか理解出来なかったが。次第に目が慣れていくにつれ、「白い光の洪水」は、天井にある蛍光灯のものだとわかった。天井の色自体が真っ白になっているため、光が白く増幅されて見えたのだろう。  それがわかると、さっきはまるで、光の渦の中にいきなり放り込まれたような気がして、動揺したコウイチだったが。今は、いくらか気持ちが落ち着いてきた。何か目が覚めた瞬間は、天井全体が光っているようにも思えたのだが。やはり、気のせいだったのだろう。  しかし、こうして落ち着くと、また新たな不安がコウイチの頭をよぎり始めた。自分の真上にある、真っ白な光を放つ天井。それは、全く見覚えのないものだったのだ。明らかに、自分の部屋ではない。では、ここはいったいどこなんだ?  何か手がかりになるようなものはないかと、辺りを見回そうとして、コウイチは違和感を感じた。首が、全く動かなかった。右にも左にも、ピクリとも動かせなかった。これはなんだ? と思った時、首まわりに、厚い布のようなものが巻かれているのに気付いた。  これは、ギプスか。首にガッチリとギプスをはめられてるから、動かせなかったのか。見覚えのない真っ白天井、そして首にギプス。俺は……今、病院にいるのか。何かでケガをして、どこかの病院に入院してるのか……?
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