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さよなら最後の目玉焼き
BB小説家コミュニティというコミュニティで、「目玉焼きは綺麗に焼けるのか?」という参加者全員共通のネタで書いたものです。
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「最後の卵は、目玉焼きにしようぜ」
砂浜にひとつ卵をおいて、俺は言った。
持ってきたリュックサックに入っていた食糧は、これで最後だ。
この暑さなら、石の上に置いて日向においておけば、何時間かで目玉焼きになるだろう。
俺の提案を聞くと、ホンダは顔をしかめた。
「最悪のチョイスだな。俺の故郷では、目玉焼きほど戦争が起きるメニューはないんだぜ。何をかけるかだろ、サニーサイドアップにするかひっくり返すかだろ、どのタイミングでひっくり返すかだろ、何と食べるかだろ……」
彼は、指折り数えて俺に訴える。
「そんなんで戦争か、くっだらねーな」
俺が言うと、ホンダは肩をすくめる。
「まあ、俺たちの戦争の理由だって、大差なかっただろ」
そう言われればそうだ。そもそも、くだらなくない戦争の始まり方が人類史にあっただろうか。
「あー、まあ。戦争の話はいいだろ。せっかくの最後の晩餐だ。残ってる人間が俺だけで悪いけど、目玉焼きができるまで、なんか楽しい話をしようぜ。時間だけは十分にあるんだ」
「楽しい話? どんな?」
言われてみると自分でもよくわからない。
卵を石の上に割ると、石の形に沿ってどろりと流れた。
「うーん。たとえば、目玉焼きに何をかけるか、とか?」
ホンダは笑う。
「さっきしてたことじゃねえか」
「いーんじゃねえの、最後の晩餐をゆっくり楽しもうぜ」
「そうだなぁ」
俺たちは、ぼんやりと海の向こうを見た。
核戦争ですべて海の底に沈んでしまった、俺たちの故郷を。
終
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