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「雄大!!!!!」
パッと目が覚めた。
目の前にはとても焦った顔のレオがいた
「雄大!!!雄大!良かった!!早く逃げるぞ」
熱い……目の前のレオは凄い濡れている
周りを見るとそこは火…
「え…?」
火事…
脳では瞬時に理解出来たが体が動かなかった
熱い…。俺の家が燃えてる…。目の前にレオが…
ここにいたら危ない…
息苦しい、目眩がする…
「ハァハァハァ、ハァハァッッ、ハァハァハァ…」
息が乱れ
「雄大!!逃げるぞ」
レオは動けなくなった俺の腕を必死に引っ張り出した
リビングに繋がる扉を開けるとリビングも火の海…
異様な光景だった。
俺の物が燃えていく、父と過ごした時間が燃えていく感覚だった
「あ!!!と、父さん!!!!父さんはどこ!!!?」
俺は必死に周りを見た
周りは火の赤と黒い煙に覆われて視界の言う視界はなく父を確認することが出来なかった
「え?雄大パパ??」
レオも父の事は分からないらしく多分避難していないのだろう
俺はレオの手を引き剥がし
父のいる部屋の扉を開けた
「と、とうさっッッツ!!!」
扉を開けた瞬間ブワッと熱風が流れてきた
皮膚が溶けそうな感覚。
「と、ぅさっ、ゲホッ、ヴゥ、ゲホゲホッ!!と、トヴさっ」
黒い煙や熱風を吸い込んで咳き込む中、父を呼んだ
父さん!!父さん!!………
「ュ、ヴ、だ…ィ…」
ガラガラの声が聞こえた
それは足元から…
「……………………………っ!!!!」
言葉を失った。
「雄大!!!!見るな雄大!」
レオはタオルで口を抑えながら僕の腕を引っ張る
レオは俺の口をタオルで、目を手で抑えた
そこに、そこにいた…
それは紛れもなく父だった…。
「…ッッレ゛、オ゛グン……ュヴダ、いをダ、ノ゛ンダ…」
目を塞がれてもわかった…
父はレオと俺の方に黒くボロボロの手を伸ばしている…。
「…と、父さん!!!!父さん!!」
乾いた熱風のせいで涙が全て持っていかれた。
歯を食いしばり見えない父の手を握ろうと手を伸ばした
「何やってる雄大!死にたいのか!!!お前のお父さんはお前に逃げろって言ってるんだぞ!!!早く逃げるぞ」
「…ヴぅ、い、嫌だ、と、うさん!…父さん!!!!」
必死に手を伸ばすが、レオが信じられないぐらいの力で俺を引っ張る
「お父さんっ!!!!!」
レオの手が目から離れた時に一瞬見えた父の顔は真っ黒で真っ赤で…
……とてもにこやかに笑っていた
「あ゛ァァアあぁ、あ゛ーーー!!」
その瞬間、この世のものとも思えない俺の声が聞こえた
それと同時に目から大量の涙がボロボロこぼれた
父の温かい手が好きだった
父のニタニタ笑う顔が好きだった
父の仕事終わりのお酒を飲むだらけた姿が好きだった
父のたまに馬鹿げた言動をする所が好きだった
父のかっこいい広い背中が大好きだった…。
必死に手を伸ばしてもその手にも笑顔にも背中にも届かない…
ニコリと笑った父は崩れる家具や家の柱や屋根に消えていった
いつの間にか俺の涙は枯れていた。
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