ジャッジメントとその理由

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ジャッジメントとその理由

 年が明けて1月上旬。授業においてレポートの返却があるとの話を聞いて、僕は船山教授の講義に出かけた。 「というわけで、これで私の民法総則の講義は最後です。これから返却するレポートの評価と授業の出席状況を総合判断して単位認定をしますので、そのつもりでいてください」  授業の最後、船山先生はそう言って一枚一枚レポートを返却していく。 「松山徹平君」  僕の名前が呼ばれた。恐る恐るレポートを受け取り、自席へと戻る。 「おい!おいしいカレーライスのつくりかた書いたらホントに60点貰えたよ!」 「すげえな。あの話、本当だったのかよ」  前の列からひそひそ声が聞こえてきた。60点と言ったら、大学で単位を貰うには及第点と言っていい。僕は誰よりもおいしいカレーのつくりかたを書いた自信がある。意を決してレポートの最後のページを開いた。 「嘘だろ?」  僕の口から不意に言葉が漏れた。  そこには0点の文字が大きく刻まれていた。
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