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「しかし、立派な息子よのお」
その言葉に子をあやす夏候嵩の手がぴたりと止まる。
「え? あ、あの、この子は女の子です」
「! なんと!? おなごとな? もう一度見せておくれ」
「あ、は、はい」
そっと赤子を受け取り、くるんだ布を緩めると確かに男児の印はついていない。股間を見つめている曹騰を赤子は意味ありげに「くひゅっ」と笑う。
「うーむ」
見れば見るほどこの赤子は素晴らしいと思えてくる。もう理由などなく、この子のためなら財産どころか命さえも惜しくない気がしてくる。たとえ、女児だとしてでもだ。
「そなたを養子に決めよう」
「おお! ありがたい! 生涯かけて父と仰ぎお仕えいたします!」
「うむ、うむ」
こうして夏候嵩は曹騰の養子となり、曹嵩巨高となる。そしてこの赤子が曹操孟徳である。彼女は曹騰のもとで健やかに何不自由なく育つ。曹騰も実の父、曹嵩も曹操が何をしても諫めることなく、溺愛して育てたおかげで彼女の器を小さくすることはなかった。
教育から、肌につける衣服まで手ずから選び、まるで天子に仕えるがごとく、曹騰は曹操に全てを与えていく。また彼女の方も全てを吸収していくのは海綿の如しである。曹騰にとっていつの間にか漢王朝ではなく、曹操孟徳が己の全てとなっていくのであった。
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