Fourth

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「マナミ、ステディリングしてないけど、フリーなの?」  留学して一ヶ月。  突然、隣の席のジェニーに言われた。  この学校で指輪をしていない子は『恋人なし』と、みなされるらしい。  そう言えば、男の子も彼女のいる子は指輪してるなあ… 「ううん、フィアンセがいる」  あたしが笑顔でそう答えると。 「あら、それじゃ指輪ぐらい買ってもらいなさいよ」  ジェニーは頬杖をついて言った。 「どうして?」  ノートをめくりながら問いかけると。 「あなた、きっとフリーだって、いろんな男の子が目をつけてるわ」 「へえ」  あたしって、モテるんだ。  確かに日本でも告白はされてたけど。  あたしには、尚斗さんがいるもの。 「ね、マナミのフィアンセって、どんな人?」 「バンドマン」 「バンドマン?大丈夫なの?」 「何が?」 「この辺でバンドしてるのって、女の子にモテたいからって奴ばっかりじゃない」  ジェニーは、あからさまに辟易したような顔で首をすくめた。  んー…そうか。  そういうイメージって強いよね。  クラスの男の子も何人かバンドを組んでるみたいだけど、みんな微妙な感じでカッコつけてて…残念にしか見えない。  どうせなら、もっと堂々とカッコつければいいのに。 「あー…でも、プロだから」 「え~っ、すごいじゃない。紹介してよ」 「うん…でも、忙しいみたいだから…」  実際、あたしは何だかんだ言いながらも、五回事務所を訪問した。  だけど尚斗さんは忙しいみたいで…  ちょうど『録りが終わった』っていうまーくん(朝霧真音)と『ひっさしぶりやねー』って、関西弁で盛り上がって…  尚斗さんはそれを、まるで保護者みたいな顔で…キーボードの前に座ったまま、優しく笑って見てた。  約束のディナーも、まだ。  これじゃ…デートなんて、いつの話になるやら… 「何、有名人?」 「Deep Redってバンドでキーボード弾いてる」  あたしがそう答えると、ジェニーは一瞬黙ったあと 「冗談キツイわよー」  ケラケラと笑い始めた。  むっ…  どうして冗談? 「どうして?本当よ?」 「だって、それってナオトでしょ?」  あら、有名だな。 「そうよ」 「ナオトには、カレンっていう彼女がいるもの」 「……」  頭の中が、真っ白になった。  彼女?  そういえば、あたし…そんなこと聞いたこともなかった。  彼女がいるかどうかも確かめもせず…  尚斗さんを追って、ここまで来てしまった。 「残念ね」  ジェニーがクスクス笑いながら、席を立った。  あたしは惨めになって立ち上がる。  そして、尚斗さんの事務所に向かった。
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