Fourth

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「…なっ…尚斗さん…い、いますか」  全力疾走で事務所に辿り着いて、息を切らしながら問いかけると。  ドアの前にしゃがんでマンガを読んでたボーカルのナッキーさんが。 「ああ、さっき帰ってきたよ」  って、ドアを少し開けて。 「ナオトー、愛美ちゃん来たぜー」  大きな声で、言ってくれた。 「…どうも」 「いやいや」  …今日は、ヒマなのかな。  ドアの前から廊下の床に移動して、再びマンガを読み始めたナッキーさんを見て、そう思った。 「や。どうしたの。学校の時間じゃない?」  尚斗さんがそんなことを言いながら顔をのぞかせて。  あたしは、思わずキュンとなる。 「あの…」 「ん?」 「聞きたいことが…」 「何?」  あたしがモジモジしてると。 「ナオト、早く」  部屋の中から、女の人の声。 「カレン、ちょっとコーヒーでも飲んでて」  尚斗さんが、振り返って言った。 「……」  カレン… 「で?何?」 「あたし…」 「ん?」  体が、震える。 「あたし、尚斗さんの許嫁だよね?」  あたしが、うつむいたままそう言うと。 「え?」  尚斗さんは、すっとんきょうな声を出した。 「尚斗さん、言ったよね。、結婚しようって」  噛みしめるように言いきると。 「あー…」  尚斗さん、頭をかきながら…困った顔。 「子供の頃の話だろ?」  プツッ。  あたしの中で、何かの線が切れた。  今までしてきたことは、何? 「…愛美ちゃん?」 「そーだよね。子供の頃の話だもんね」  あたしは、冷めた目で笑ってみせる。  …バカみたい。 「彼女、呼んでるよ?早く行って」 「ああ…それだけ?」 「うん」 「気を付けて帰んなよ」 「うん」  あたしは、向きをかえて歩き出す。  ナッキーさんの前を、軽くお辞儀しながら通りすぎると。 「これでいいのかなー」  ナッキーさんが、無気力な声で言った。 「君、あれでしょ。ナオト追ってここまで来たんでしょ。それじゃ、こんなの納得いかないんじゃない?」  立ち止まったあたしは、ナッキーさんに背中向けたまま。 「…だって仕方ないじゃない。尚斗さんにとっては、子供の頃の話なんだもん」  それだけ言って…また、歩き出す。  通りに出ると、やっと涙が浮かんできた。  あたし、ばかみたい。  あたしの人生、尚斗さんのためだけだったのに。  ばかみたい…。
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